アサヒエステート株式会社

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アサヒエステート株式会社 JR総武中央線「新小岩駅」北口から徒歩5分にある不動産会社です。

18/05/2026

ボランティアバス・長女の子供机

宮崎さんは言った。「皆さん、想像してください。皆さんのご自宅が、津波で流された後に、ガレキだけのご自宅を想像して下さい」

※想像の時間
上平井橋が崩落するなんて。荒川と中川の濁流は、コンクリートの堤防を総攻撃して、破壊して、乗り越えた。濁流はドゥワァ~、ギィヤァーという破壊音と悲鳴のなか、家や商店をのみ込んだ。わが家の一部は濁流に、全部が濁流となった。残ったのはガレキと借金の山だけだ。

それをボランティアが、一生懸命に片付けてくれた。涙がこぼれた。こんなに人様の優しさを感じたのは初めてだった。私は労をねぎらうため、作業の終わる時間に我が家(跡地)へ行った。

愕然とした。わが家の残骸を背景に、ボランティアが写真を撮っていた。カメラに微笑み、指さし、ピースサインをして。長女の壊れた子供机に、片足をのせて、嬉しそうに笑っていた。

15/05/2026

ボランティアバス・バックドロップ

「皆さんはボランティアです。ここに来たのはボランティア活動のためです」目を赤く、口の端に力を入れて、なで肩を上げた。まるで、羽を広げて威嚇する孔雀のように。

「ボランティア活動に、心から感謝します。ありがとうございます」宮崎さんは言った。なで肩にもどり、頬の引き攣りは緩み、おやつ前の少年のように、ふっくらとした。

「ボランティアは大変な作業です。汗を流して泥だらけになり、ガレキの撤去をします。そういう皆さんの作業の様子を、地域の皆さんは(ありがとう)という感謝の気持ちで見ています。涙を流して、手を合わせるお年寄りもいます」と言い、悲しそうな目をした。

さて、宮崎さんは私達に何を言いたいのか。話が見えない。単に、感謝なのか?

バックドロップのように、高く持ち上げてから、頭からストンと落とすつもりなのか。ざわざわしながら、私は話の続きを待った。

14/05/2026

ボランティアバス・ドライアイスの声

宮崎さんを中心に、丸い円陣が組まれた。宮崎さんは「それでは」と言うと、六法全書の愛読者のように、気難しい顔をした。

「これから大事な話をします」大事な話という単語が、私たちに浸透するまで沈黙した。5秒後に肩を揺らして、眉間に皺を寄せた。まるで「皆さんの中にバス内で窃盗をした人がいます」と刑事が言うような険しい目で。私たちに、ピリピリした緊張が走る。

宮崎さんは「お願いがあります」と言った。お願いと言いながら、圧のある口調で。

「皆さんの中に、現地の状況を、ボランティア活動の様子を、写真に撮りたい方がいると思います」まばたきを連続3回して、口をギュっと閉じて、また沈黙した。頬が引き締まり、赤い筋が2本走る。血流は良さそうだ。私は小さく呟いて、話の続きに耳を傾けた。

「写真は撮らないで下さい!」冷たいのか熱いのか分からない、ドライアイスの声で。

12/05/2026

ボランティアバス・真実は映せない

一括りにガレキと言っても同じものはない。木材から挑発的に飛び出た釘、全体的に、あるいは部分的に変形したコンクリート、ステンレス製の枠、ひしゃげた三輪車、箪笥の引き出し、砕けたブロック塀、黒い畳、割れた瓦、換気扇のプロペラ、泥の寝具、原形をとどめない、原形が不明な数々のなにか。

一晩バスに揺られて、ようやく到着した現地で、作業着に着替えて、潮風を受けて、ガレキを片付けるボランティアは、寡黙だった。何かを言葉にしても、それは真実ではない。カメラは、事実は写せるが真実は映せない。

私は首のタオルで額の汗を拭い、気まぐれに漂い、自由に形を変える雲を見つめた。涙を含んだ強めの海風が口に入り、口の中に塩辛いものを感じた。

宮崎さんは「皆さん、集合してください」と放牧したバラバラの牛を集めるように声を響かせた。

10/05/2026

ボランティアバス・不動産の営業マン

テレビの通りだが、テレビとは違った。現場には、現場で感じる空気と匂いがあり、そこに建物のあった空間が虚無的に広がり、建物の形跡と痕跡と爪痕が残る。

その一つ一つは原材料であり、土台と基礎であり、柱と梁であり、その全ては紛れもなく生活に関わるものだ。そこに、重要な役割があり、暮らしを支えて守る使命がある。

ところが、3月11日の大震災と大津波によって、この地域は変わり果てた。わずか数分の揺れが、人生を狂わせ、破壊して、否応なしに、修正を余儀なくした。

宮城県の蒸し暑さは、東京の排気ガスの混在した不快さはなく、海風と潮風は、作業着に籠った熱を、効率よく逃がしてくれた。

不動産の営業マンのように、ここを「見晴らしが良い地域です」と言ってはいけない。

3月11日以前は、ここで、この場所で、人々が、普通に暮らしていたのだ。

08/05/2026

ボランティアバス・真っ赤に燃えていた

うたた寝もできなかった。ボランティアセンターを出発したバスは、すぐに到着した。

現場は、海岸からバナナのように湾曲した道路を上る途中の小高い区画だった。

チームリーダー(現場責任者)は、目印もないのに、迷わずに私たちを誘導した。潮の空気が鼻孔をつくが、海は見えない。

カモメの集団は、爆撃機のように編隊を組んで、勇ましく海へ向かって飛んで行った。

リーダー宮崎さん(男性・推定30代)は、ジャガイモの品定めのように、私達を見回して無言で頷き「宮崎です、分からないことがあれば聞いて下さい」統率者の声を発した。

私は「宮城に住んでいる宮崎さんですか」と質問したかったが、現場は通夜のように(し~ん)と静まりかえり、私を含めて、誰ひとり、質問者はいなかった。

宮崎さんの目は、ノルマ達成に奔走する営業マンのように、真っ赤に燃えていた。

06/05/2026

ボランティアバス・カリスマの叱咤激励

黒山の人だかり。ボランティアセンターは学生から高齢者まで、人がひしめき合う。なかでも、まるで磁石に引き寄せるように、ある一か所に集中した。

それはボランティアセンターの正面壁に掲げた大きな垂れ幕で、ギターを弾きながら歌うカリスマ男性ミュージシャンだ。そこに手首くらいの太字サインと激励(ボランティア員・自衛隊員)の言葉が、やや右肩上がりに、力強く書き込まれていた。

カリスマが、ここ宮城県七ヶ浜ボランティアセンターに来たぞ!という歴然とした証だ。カリスマの姿(写真)と書体を見た誰もが、「よし、やるぞ!」と、胸の炎を燃やした。

カリスマの熱量は、リアルタイムであろうとなかろうと、そこに集う全ての人が感じた。

私は、カリスマからの「ご苦労さん(ボランティア活動を)頼んだよ!」という、短いが気持ちの入った叱咤激励を受け取った。

01/05/2026

ボランティアバス・その有難さ

まるで青春の風のように、コンビニは明るく爽やかです。軽快な音楽、新鮮な食べ物と飲み物、新聞と雑誌、生活用品が溢れます。

生活感のない病室と正反対です。
店員は私に、保育園の先生のように温かい眼差しを向けます。私が商品棚の前にいると「手に取りたい商品がありましたら声を掛けて下さいね」と言います。その一言に、その気遣いに、私は救われました。

私は車椅子で、コンビニ内をぐるぐる回り、缶コーヒーと一口羊羹、新聞を買いました。それを車椅子の両膝に、用心深く乗せます。まるで、全財産の預金通帳のように。

私は談話室へ行きました。新聞を広げて、小さい一口羊羹を鼠のようにかじり、缶コーヒーを少しずつ、ズルズルとすすりました。
これだけのことが、癒しと安らぎでした。日常生活は、失われてから初めて、その有難さに気が付きます。

30/04/2026

ボランティアバス・私の入院生活

コンビニの煌々とした明るさに、私は、めまいを感じました。病室からコンビニは、非日常から日常です。勿論、日常へ戻った訳ではなく、肩が触れた程度に、触れただけです。搬送から病室での1週間は、軟禁状態です。

病室に何がありますか?何ができますか?白い天井を、富士山の雪だと眺めても、天井は天井です。病室の壁は、妖怪ぬり壁のように優しくありません。入院患者の嘆きと悲しみと悲鳴と絶叫を遮断する、堅固な壁です。

入院患者は、自由のない刑務所の受刑者のように、囚われの身です。ベッド周りのカーテンが微かに揺れて、他人の咳やくしゃみ、溜息に、廊下を歩くパタパタした足音に、病院へ入る救急車のサイレンに、身を潜めて、そっと耳をすませる。

そんなことに、意味はありません。でもこれが、足を吊るされた人間の五感であり、これが私の入院生活でした。

28/04/2026

ボランティアバス・コンビニに入る

ボランティアについて、怪我について、怪我以降について、私は、大筋の経緯を纏めた。勿論、隣に座る山成さんへの説明のために。

「今年(2011年)元旦の早朝に」と、私は語り始めた。「ランニング中に転倒して、大腿骨と手首を骨折しました。道路から動けずに、救急車で病院に搬送されました。

ここからが、更に大変です。担当医師は「お正月は手術ができない」と、言うのです。私は(正月は骨折してはいけない)と思いました。

一週間は、折れた左足を吊るされて、ベッドから足が10㎝浮いていました。ベッドから動けず、トイレも行けません。

待ちに待った手術は、1月7日でした。翌日からは、予想以上に大変でしたが、車椅子に乗れて、それは嬉しかったです。

私は車椅子に乗り、エレベーターに乗り、5階の病室から1階まで降りて、行きたかった、病院内のコンビニに入りました。

27/04/2026

ボランティアバス・私の名前は?

「佐藤さんは」と、山成さんは初めて私の名前を口に出して、初めて私に質問した。「どうしてボランティアバスに参加したの?」

(参考)京成バス主催ボランティアバス、参加費7千円(ボランティア保険込)・金曜夜にバス乗車~車中泊~翌朝に宮城県七ヶ浜の現地ボランティアセンターに到着~指示されたグループ毎に、現場で主にガレキの撤去作業をする。午後3時終了~バス乗車~土曜日夜に帰宅)

ボランティア参加の問いに、私は困惑した。「あなたのお名前は?」と訊かれて、「えぇ~と、私の名前は何だったかしら?」と、必死に記憶をたどる高齢者のように。

私は少しの間、自らの考えを巡らせた。そして、やっぱり、あの怪我が起点(転機)だったと、あらためて思い至る。

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