11/10/2026
「誰に貸すか」で、空室対策は変わる
賃貸物件の空室が続くと、オーナー様はまず、
「家賃を下げた方がいいかな」「設備を新しくした方がいいかな」「もう少し広告を増やした方がいいかな」と考えると思います。
もちろん、どれも空室対策として間違いではありません。
ただ、私はその前に一度考えてほしいことがあります。
「そもそも、この物件は誰に選ばれる物件なのか?」
ここが曖昧なまま家賃を下げたり、設備を追加したりしても、思ったほど効果が出ないことがあります。
賃貸物件は、何でもできる万能選手ではありません。
築年数、間取り、駅からの距離、広さ、日当たり、駐車場、周辺環境など、それぞれに得意・不得意があります。
だから私は、空室対策を考えるとき、
「一番大きな市場を狙う」のではなく、「この物件が勝ちやすい市場を探す」という考え方が大切だと思っています。
人口が多いから、その人たちに貸せるとは限らない
例えば、周辺に20代の単身者が多い地域だから、「20代向けの部屋にしよう」と考える。
一見すると、理にかなっているように思えます。
でも、ここには落とし穴があります。
20代が多いということと、その地域で20代がその物件を選ぶということは、同じではありません。
実家暮らしの人もいます。
会社の寮に入る人もいます。
もっと駅に近い物件を選ぶ人もいます。
新築や築浅を選ぶ人もいます。
つまり、「その地域に何人いるか」と「その物件を選んでくれる人が何人いるか」は別の話です。
さらに「単身者」と一括りにしても、25歳の会社員と65歳の単身者では、探している部屋がまったく違います。
家賃の考え方も違えば、必要な広さも違う。
駅距離を重視する人もいれば、駐車場や病院への近さを重視する人もいる。
だから、人口統計はあくまで入口です。
数字の大きさだけで、ターゲットを決めない。
私はここをかなり大事にしています。
私が物件を見るときは「3つ」を重ねます
では、実際に誰に貸すのかをどう考えるのか。
私は大きく3つの情報を重ねて見ます。
一つ目は、周辺地域の市場データです。
年齢層、世帯構成、単身世帯の割合、周辺企業や学校、病院など、その地域にどんな人がいるのかを見る。
二つ目は、現在の競合物件です。
ここが非常に重要です。
「この地域には単身者が多い」と分かっても、同じ単身者向け物件が100室も200室も募集されていたら、話は変わります。
家賃はいくらなのか。
築年数は。
駅からの距離は。
設備は。
写真は。
初期費用は。
同じような物件がどれくらい募集されているのか。
ここまで見て、初めて「競争できるか」が分かります。
そして三つ目が、その物件自身の情報です。
過去の入居者。
退去理由。
問い合わせの内容。
内見された人の反応。
これまでの募集条件。
私はここをかなり重視します。
ただし、過去に20代男性ばかり入居していたからといって、「この物件は20代男性向けだ」と決めつけるのも危険です。
もしかすると、今まで掲載していた写真がそういう人にしか響かなかっただけかもしれない。
初期費用の設定が若い人向けだったのかもしれない。
仲介会社への伝え方が偏っていたのかもしれない。
「今まで選んでくれた人」と「本当は選んでもらえる人」は、分けて考える。
ここを間違えると、過去の入居実績に引っ張られてしまいます。
「市場の大きさ」だけではなく、4つの角度から見る
集めた情報を見ながら、私はターゲット候補を次の4つの視点で考えます。
市場規模
その層が地域にどれくらいいるのか。
競合状況
その人たちが選べる物件がどれくらいあるのか。
物件との相性
その物件の間取りや立地、設備、周辺環境が、その層の希望と合っているのか。
収益性
その人たちに合わせた場合、どのくらいの家賃で、どのくらい長く住んでもらえそうなのか。
例えば、
「20代単身者は多いけれど、競合が非常に多い」という市場と、
「40~50代の単身者は少ないけれど、条件に合う物件が少ない」という市場があったとします。
この場合、後者の方が、その物件にとってはチャンスになることがあります。
賃貸経営で大切なのは、市場の大きさではなく、その物件がその市場でどう見えるかです。
ターゲットを変えると、空室対策そのものが変わる
例えば、築25年、2DK、駅徒歩15分、駐車場付きの物件があるとします。
オーナー様は、「2DKだから子育てファミリーに貸したい」と考えていた。
ところが、周辺を見ると新しい2LDKがたくさんある。
駅から近く、設備も新しい。
ここで同じ土俵でファミリー層を取りにいくと、どうしても不利になります。
そこで周辺をよく見てみる。
近くに病院がある。
工業団地がある。
駐車場付きの物件を探している人がいる。
そして、過去の入居者を見ると、40~50代の単身勤務者が比較的長く住んでいた。
そうなると、物件の見せ方が変わってきます。
「子育てファミリー向けの2DK」ではなく、「仕事をしながら、広さも欲しい単身者の住まい」として考えてみる。
寝室とは別に、もう一部屋を仕事や趣味のスペースとして使える。
駐車場がある。
収納がある。
病院や勤務先へのアクセスが良い。
こうした特徴を前面に出す。
すると、必要な空室対策も変わります。
子ども向け設備を追加する必要がなくなるかもしれません。
その代わり、仕事や趣味に使える部屋として写真を撮る。
収納の大きさをきちんと見せる。
駐車場の使いやすさを伝える。
募集コメントも変える。
家賃設定を競合と比較する。
仲介会社にも「こういう方に見てもらいたい」と伝える。
ターゲットが決まると、募集の一つひとつがつながっていきます。
空室対策で「何を付けるか」から考えない
私は、空室対策でいきなり設備の話をすることには少し慎重です。
「宅配ボックスを付けましょう」
「ウォシュレットを付けましょう」
「アクセントクロスを入れましょう」
もちろん、それで決まる物件もあります。
でも、「誰に貸すのか」が決まっていない状態で設備だけ増やしても、投資の方向がズレることがあります。
例えば、ファミリーを狙うなら収納や生活動線が重要かもしれない。
単身勤務者なら、駐車場や仕事ができるスペースの方が響くかもしれない。
高齢者なら、駅距離だけではなく、医療機関へのアクセスや室内の安全性が重要になるかもしれない。
同じ2DKでも、誰に見せるかによって「魅力」が変わります。
だから私は、ターゲット → 物件の見せ方 → 募集条件 → 必要な投資という順番で考えます。
「この物件は誰なら喜ぶか?」から考えてみる
空室が続いていると、どうしても物件の弱点ばかり探してしまいます。
駅から遠い。
築年数が古い。
設備が古い。
家賃が高い。
もちろん、弱点を把握することは大切です。
ただ、私はそこで終わらせません。
「この条件を弱点と感じない人は誰なのか?」と考えます。
駅徒歩15分でも、車通勤の人なら駅距離の重要度は下がるかもしれません。
築25年でも、広さを求める人には新築のコンパクトな部屋より魅力的かもしれない。
2DKも、単身者にとっては「広すぎる」のではなく、「仕事部屋や趣味部屋を持てる」というメリットになるかもしれません。
不動産は、条件そのものが変えられなくても、その条件をどう評価する人に届けるかは変えられます。
ここに空室対策の面白さがあります。
「誰に選ばれる物件なのか」を決める
空室対策というと、家賃を下げる。
設備を増やす。
広告を増やす。
こうした話になりがちです。
でも、その前にやるべきことがあります。
「この物件は、誰に選んでもらうのか」これを決めることです。
最大の市場を狙う必要はありません。
競合が少なく、自分の物件の特徴が評価され、適正な家賃で長く住んでもらえる市場。
私は、そういう「勝てる市場」を探すことが、賃貸経営では大切だと思っています。
そして、ターゲットが見えてくれば、家賃も設備も写真も募集条件も、すべて考えやすくなります。
空室が出たときに、「何を変えれば決まるんだろう」と考える前に、
「この物件を一番必要としてくれるのは、どんな人だろう」と考えてみてください。
私は賃貸物件を見るとき、物件そのものだけではなく、その物件と入居者の「ご縁」がどこにあるのかを見るようにしています。
空室を埋めることだけを目的にするのではなく、その物件だからこそ選んでもらえる相手を見つける。
そこから考えると、賃貸経営の打ち手はかなり変わってきます。
株式会社ハウジングサクセス
代表取締役 金子 徳公
https://www.housing-success.co.jp/blog/%e3%80%8c%e8%aa%b0%e3%81%ab%e8%b2%b8%e3%81%99%e3%81%8b%e3%80%8d%e3%81%a7-%e5%a4%89%e3%82%8f%e3%82%8b%e7%a9%ba%e5%ae%a4%e5%af%be%e7%ad%96%e3%80%80%e3%80%8c%e6%9c%80%e5%a4%a7%e3%81%ae%e5%b8%82%e5%a0%b4/