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SCAPE SCALE TO ENVIRONMENT.
一つの建物から、街の未来へ

S・CAPE MATERIAL NOTE|素材を選ぶvol.01 床材の選び方床は、毎日触れる、空間の土台。色や柄だけでなく、足触りや掃除のしやすさ、傷との付き合い方まで考えると、暮らしに合う素材が見えてきます。今回は、代表的な6種類の床材...
10/10/2026

S・CAPE MATERIAL NOTE|素材を選ぶ
vol.01 床材の選び方

床は、毎日触れる、空間の土台。

色や柄だけでなく、足触りや掃除のしやすさ、傷との付き合い方まで考えると、暮らしに合う素材が見えてきます。

今回は、代表的な6種類の床材について、長所・短所と、おすすめの場所をご紹介します。

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01|フローリング
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木の表情と温もりを楽しめる床材。

【長所】
木目が空間に柔らかな印象を与え、タイルに比べて足裏に冷たさを感じにくい素材です。

【短所】
傷やへこみ、水分による変色・伸縮に注意が必要。無垢・複合、表面の仕上げによって、質感や手入れの方法が変わります。

【おすすめの場所】
リビング、寝室、子ども部屋など、素足でくつろぐ空間。

━━━━━━━━━━━━
02|塩ビタイル
━━━━━━━━━━━━
木目や石目など、多彩な表情を選べる床材。

【長所】
柄が豊富で、日常の掃除がしやすいことが魅力。傷んだ部分だけを張り替えることも可能です。

【短所】
天然木や石とは触感が異なります。熱や下地の凹凸の影響を受けやすく、継ぎ目からの水の浸入にも注意が必要です。

【おすすめの場所】
キッチン、洗面室、店舗、オフィスなど、デザインと手入れのしやすさを両立したい場所。

━━━━━━━━━━━━
03|タイル
━━━━━━━━━━━━
硬質な質感と、目地の割り付けを楽しむ床材。

【長所】
磁器質タイルは傷・摩耗・水に強く、質感を長く保ちやすい素材です。

【短所】
硬く、冷たく感じやすいことがあります。目地の清掃や、衝撃による割れにも注意。濡れる場所では滑りにくさの確認が大切です。

【おすすめの場所】
玄関、土間、洗面室、テラスなど。屋内外や水濡れの条件に合う製品を選びます。

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04|長尺シート
━━━━━━━━━━━━
広い面を、少ない継ぎ目で仕上げる床材。

【長所】
清掃しやすく、耐摩耗性や防滑性など、用途に合わせた性能を選べます。

【短所】
傷んだ部分を補修すると、跡が目立つ場合があります。下地の凹凸や接着状態も、仕上がりを左右します。

【おすすめの場所】
洗面室、トイレ、廊下、診療所など、清掃性や日常の使いやすさを重視する場所。

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05|モルタル金鏝仕上げ
━━━━━━━━━━━━
鏝の跡や色むらが、素材の表情になる床。

【長所】
継ぎ目を抑えた一体感と、素朴な風合いが魅力。木や金属など、異なる素材との組み合わせも楽しめます。

【短所】
ひび割れや色むらが生じやすく、無保護の状態では汚れが染み込みやすい素材です。防塵・防汚の表面保護も合わせて考えます。

【おすすめの場所】
玄関土間、アトリエ、店舗など、経年変化を味わいとして楽しめる場所。

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06|塗床
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樹脂などを塗り、連続した面をつくる床。

【長所】
継ぎ目を抑えて仕上げられ、耐摩耗性・耐薬品性・防滑性などを用途に合わせて選べます。

【短所】
下地の水分やひび割れ、処理不足によって、膨れ・剥離が生じることがあります。補修跡が目立つ場合もあります。

【おすすめの場所】
ガレージ、作業室、店舗、厨房など。水・油・熱の条件に合わせた樹脂と工法の選定が必要です。

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素材には、それぞれ得意な使い方があります。

素足で過ごすのか。
水や油を使うのか。
傷や色の変化を、どう受け止めたいのか。

「好きな見た目」に「使い方」を重ねることが、素材選びの大切な一歩です。

S・CAPEでは、素材の組み合わせから間取りまで、暮らしに合わせて住まいを考えます。
新築・リノベーションのご相談は、DMまたは公式サイトへ。

次回は「壁材の選び方」をご紹介します。

※長尺シートはビニル床シート、塗床は樹脂系を中心に紹介しています。性能は製品・仕上げ・施工方法によって異なります。

#素材選び #床材選び #住宅設計 #リノベーション

【ARCHITECT COLUMN|VOL.38】【一級建築士が教える】「中古マンション、間取りはどこまで変えられる?」― 壁を壊せば、自由に間取りを変更できるわけではない。―中古マンションを購入して、自分好みの間取りにリノベーションしたい...
10/10/2026

【ARCHITECT COLUMN|VOL.38】

【一級建築士が教える】

「中古マンション、間取りはどこまで変えられる?」

― 壁を壊せば、自由に間取りを変更できるわけではない。―

中古マンションを購入して、自分好みの間取りにリノベーションしたい。

「壁を全部壊して広いLDKにしたい」「キッチンを窓際に移動したい」「和室をなくして一つの空間にしたい」

こうしたご相談をいただくことがあります。

確かにマンションリノベーションでは、既存の間取りを大きく変更できる場合があります。しかし、室内をすべて解体すれば自由に設計できるわけではありません。

今回は、間取り変更を考える際に確認しておきたいポイントを解説します。

■ ① 構造によって撤去できる壁が違う

RC造マンションには、主にラーメン構造と壁式構造があります。

ラーメン構造は、柱と梁を主体に建物を支える構造です。住戸内の非構造壁は撤去できる場合が多く、比較的自由に間取りを変更できます。

一方、壁式構造は壁そのものが建物を支えています。構造上必要な壁は、原則として自由に撤去できません。

また、ラーメン構造でも柱や梁、構造壁を自由に変更できるわけではありません。

「壁に見えるから撤去できる」と判断せず、構造図や既存図面で確認することが重要です。

■ ② 水回りはどこまで移動できる?

キッチン、浴室、洗面、トイレの位置変更には、給排水設備が大きく関係します。

特に注意したいのが排水です。

排水管には適切な勾配が必要です。キッチンを遠くへ移動すると、排水管を長くする必要があり、床下の高さが不足する場合があります。

その結果、床を上げる、段差を設ける、計画を変更するなどの対応が必要になることもあります。

また、排水管の接続先となるパイプスペース(PS)は、共用部分を含む場合があり、自由に移動できるものではありません。

水回りの移動は、間取りだけでなく、排水経路・勾配・床下寸法まで確認して判断します。

■ ③ 天井を高くできるとは限らない

「天井を解体して、コンクリートを見せたい」という希望もあります。

しかし、天井裏には梁、換気ダクト、給排水管、電気配線などが通っていることがあります。

天井を撤去しても、設備配管や梁が残るため、希望する高さを確保できない場合があります。

また、直天井にすることで、断熱・遮音・照明計画などに影響する可能性もあります。

天井高は、既存の躯体と設備条件を確認したうえで計画する必要があります。

■ ④ 窓や玄関扉は自由に変更できない

マンションでは、専有部分と共用部分を区別する必要があります。

一般的に、窓サッシや玄関扉などは共用部分として扱われるため、所有者の判断だけで自由に交換・変更できるとは限りません。

例えば、窓を大きくする、サッシの色を変える、玄関扉を交換する、といった工事には制限がある場合があります。

一方、内窓の設置などは、管理規約や施工条件を確認したうえで実施できる場合があります。

■ ⑤ 管理規約による制限もある

構造的・技術的に施工できる工事でも、管理規約や使用細則によって制限されることがあります。

例えば、フローリングの遮音性能、工事可能時間、搬入経路、共用部分の養生、工事申請、近隣住戸への通知などです。

特に床材を変更する場合は、管理組合が指定する遮音性能や施工方法を確認する必要があります。

「技術的にできる工事」と「マンションで認められる工事」は、必ずしも同じではありません。

■ ⑥ 中古マンションは購入前の確認が重要

中古マンションを購入してから、

「希望していた壁が撤去できない」
「キッチンを移動できない」
「床を上げる必要がある」
「希望する工事が管理規約で認められない」

と分かることもあります。

そのため、リノベーションを前提に購入する場合は、事前に建築図面・構造図・設備図・管理規約・過去の改修履歴などを確認することをおすすめします。

ただし、既存図面が現況と一致しているとは限りません。必要に応じて現地調査を行い、解体後に確認すべき事項も整理しておきます。

■ S・CAPE CONSULTINGが考えるマンションリノベーション

リノベーションの魅力は、既存の建物を活かしながら、新しい暮らしに合わせて空間を再構成できることです。

しかし、理想の間取りを先に描いてから、実現できるかどうかを確認するだけでは、設計変更や予算超過につながることがあります。

大切なのは、既存建物の条件を理解すること。

構造、設備、採光、天井高、共用部分、管理規約。

これらの条件を整理したうえで、何ができるのか、何が難しいのかを判断する。

制約があるから良い設計ができないのではありません。制約を理解したうえで、可能性を最大限に引き出すことが設計者の役割だと考えています。

中古マンションを購入する前から建築士が関わることで、物件選定とリノベーション計画を一体的に検討することもできます。

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株式会社 S・CAPE CONSULTING
一級建築士事務所

Scale to Environment.
一つの建物から、街の未来へ。

#一級建築士 #中古マンション #マンションリノベーション #リノベーション

【ARCHITECT COLUMN|VOL.37】【一級建築士が教える】「図面通りにつくれば、同じ建物になる?」― 図面だけでは決まらない、施工品質と工事監理の話。―同じ設計図。同じ材料。同じ設備。それなら、どの施工会社がつくっても同じ建物...
07/10/2026

【ARCHITECT COLUMN|VOL.37】

【一級建築士が教える】

「図面通りにつくれば、同じ建物になる?」

― 図面だけでは決まらない、施工品質と工事監理の話。―

同じ設計図。
同じ材料。
同じ設備。

それなら、どの施工会社がつくっても同じ建物になるのでしょうか?

必ずしもそうではありません。

建築は工場で完成品を購入する商品とは違い、設計図をもとに、現場で多くの人が施工して完成させるものです。

そのため、図面が同じでも施工体制や現場での判断によって、完成度に差が生まれることがあります。

■ 設計図には何が書いてある?

設計図書には、

寸法。
材料。
仕上げ。
設備。
建具。
照明。
構造。
納まり。

など、建物をつくるために必要な情報を記載します。

設計者は、完成する建築を図面・仕様として施工者へ伝えます。

しかし、建築に必要なすべての情報を、一本一本の線ですべて表現できるわけではありません。

実際の施工段階では、さらに細かな検討が必要になります。

■ 現場では「取り合い」が発生する

例えば、

壁と天井。
床と建具。
家具とコンセント。
タイルと水栓。
照明と天井下地。
空調と梁。
設備配管と構造。

建築では複数の工種が同じ場所に関係します。

これを「取り合い」と呼びます。

図面上では成立していても、実際の施工寸法や製品寸法を確認すると、数ミリ・数センチの調整が必要になることがあります。

こうした部分をどう納めるかが、完成度に影響します。

■ 同じ材料でも仕上がりは変わる

例えばタイル。

同じタイルを使用しても、

どこを基準に張り始めるか。
目地幅をどうするか。
端部をどう納めるか。
設備機器と目地をどう合わせるか。

によって見え方は変わります。

フローリングでも、

張り方向。
割付。
壁際の納まり。
見切り。
建具との取り合い。

で印象が変わります。

塗装なら、

下地処理。
塗装回数。
艶。
施工精度。

も仕上がりに影響します。

「同じ商品を使っている=同じ完成度」

ではありません。

■ 施工図も重要

実際の施工段階では、設計図をもとに施工会社や専門業者が「施工図」を作成することがあります。

例えば、

家具。
建具。
鉄骨。
設備。
空調。
電気。
サッシ。

など。

施工図では、実際に製作・施工できる寸法や納まりまで具体化します。

設計図と施工図は同じものではありません。

設計者が意図した空間を、施工可能な情報へ落とし込んでいくプロセスが必要になります。

■ サンプルで確認する理由

素材も図面だけでは判断できません。

木。
石。
タイル。
塗装。
クロス。
金属。

色番号や品番が同じでも、実際の素材感や光の当たり方によって印象が変わります。

そのため設計では、必要に応じて実物サンプルを確認します。

複数の素材を並べて、

色。
艶。
質感。
目地。
周囲の素材との相性。

を確認する。

こうした積み重ねも、完成度を左右します。

■ 現場監督の役割

施工会社の現場監督は、建物を実際につくるために、

工程。
品質。
安全。
職人。
材料。
施工方法。

などを管理します。

良い図面があっても、適切な施工管理がなければ建築は完成しません。

特に多くの専門業者が関わる建築では、それぞれの工事をつなぐ現場監督の役割は非常に重要です。

■ 工事監理は何をする?

一方、設計者が行う「工事監理」は、施工会社の「施工管理」と同じ仕事ではありません。

設計者は、工事が設計図書と整合しているかを確認します。

また、

施工図。
材料サンプル。
色。
納まり。
寸法。
設計変更。

などについて、施工者と確認・調整を行います。

つまり、

施工会社は「建物をつくる側」。

設計者は「設計した内容が建築として実現されているかを確認する側」。

それぞれ役割が違います。

■ 図面に書いていないから、何でも施工者判断ではない

現場では、図面だけでは判断できない部分が出ることがあります。

そのとき、

「図面に書いていないから現場で適当に決める」

ではありません。

設計意図を確認し、

施工方法。
見え方。
他工種との取り合い。
メンテナンス性。

などを考えながら決めます。

この設計者と施工者のコミュニケーションも重要です。

■ だから施工会社は「価格だけ」で選ばない

同じ図面を複数社へ相見積した場合、金額に差が出ます。

もちろん価格は重要です。

しかし施工会社を選ぶときには、

施工実績。
現場監督の体制。
職人との関係。
施工図への対応。
サンプル確認。
設計者との打合せ。
品質管理。

なども確認したいところです。

「同じ図面だから、一番安い会社でも完成するものは同じ」

とは限りません。

■ S・CAPE CONSULTINGが考える建築の完成度

良い建築は、

設計者だけではつくれません。

施工会社だけでもつくれません。

職人だけでもつくれません。

設計者が考え、
図面にする。

施工会社が施工方法を考え、
現場を管理する。

職人が技術を使って施工する。

設計者が工事監理を行い、
設計図書との整合や設計意図を確認する。

この積み重ねで建築は完成します。

だから、

「図面通りにつくれば、どこが施工しても同じ」

ではありません。

同じ図面でも、
完成する建築の質は変わることがあります。

図面は建築の完成形ではなく、
建築をつくるための重要な設計情報。

そして、

その図面を実際の建築へ変えるのは「現場」です。

設計・施工・工事監理。

それぞれが適切に機能することが、建築の完成度を高めるために重要だと考えています。

株式会社 S・CAPE CONSULTING
一級建築士事務所

Scale to Environment.
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#一級建築士 #工事監理 #施工会社 #建築設計

【RENOVATION PROJECT|BEFORE】これから、マンションのフルリノベーションが始まります。既存の室内には、木部、障子、襖、畳など、以前の住まいの面影がかなり残っています。リノベーションというと、「古いものを全部壊して、新し...
01/10/2026

【RENOVATION PROJECT|BEFORE】

これから、マンションのフルリノベーションが始まります。

既存の室内には、
木部、障子、襖、畳など、
以前の住まいの面影がかなり残っています。

リノベーションというと、
「古いものを全部壊して、新しくする」
と思われがちですが、
私たちは必ずしもそれだけが正解だとは考えていません。

まず既存の建物を調査し、

何を残せるのか。
何を変えるべきなのか。
どこまで解体するのか。
現在の暮らしにどう合わせるのか。

を整理してから設計していきます。

今回も、単純に内装を新しくするのではなく、

既存の間取りや構造、
配管・設備、
採光、
素材、
そしてこの住戸が持っている雰囲気を読みながら、

今の暮らしに合う空間へ再構成していきます。

特にマンションリノベーションでは、
解体して初めて分かることもあります。

図面と現況が違う。
想定していた場所に配管が通っていない。
下地や躯体の状態が想定と違う。

そうした既存建物特有の条件も、
一つずつ確認しながら設計・施工を進めます。

完成した空間だけでなく、

BEFORE
↓
解体
↓
設計・施工
↓
AFTER

まで、今回のリノベーションの過程もご紹介していきます。

古いものを、ただ新しくするのではなく。

この住戸にあるものを読み、
これからの暮らしに合わせて再設計する。

リノベーションが始まります。

株式会社 S・CAPE CONSULTING
一級建築士事務所

#マンションリノベーション #リノベーション #一級建築士 #設計事務所

【ARCHITECT COLUMN|VOL.36】【一級建築士が教える】「設計変更は、いつまでできる?」― 変更できることと、追加費用がかからないことは別。―家づくりやリノベーションの打合せでは、「やっぱり間取りを変えたい」「キッチンを変更...
30/09/2026

【ARCHITECT COLUMN|VOL.36】

【一級建築士が教える】

「設計変更は、いつまでできる?」

― 変更できることと、追加費用がかからないことは別。―

家づくりやリノベーションの打合せでは、

「やっぱり間取りを変えたい」
「キッチンを変更したい」
「窓を大きくしたい」
「コンセントを追加したい」
「仕上げ材を変えたい」

ということがあります。

設計変更そのものは珍しいことではありません。

むしろ設計中に検討を重ね、より良い案へ変更していくことも設計プロセスの一つです。

ただし、同じ変更でも「いつ変更するか」によって、費用・工期・設計業務への影響は大きく変わります。

■ 基本設計中|比較的変更しやすい

基本設計は、間取り・ボリューム・デザイン・主要な仕様などを検討する段階です。

この時期は、まだ詳細設計や材料発注へ進んでいないため、比較的変更しやすい段階です。

だからこそ、

間取り。
生活動線。
設備。
収納。
デザイン。
予算。

などについて、できるだけこの段階で検討します。

ただし「基本設計中なら何回変更しても同じ」という意味ではありません。

決定したプランを何度も白紙に戻し、大幅な再設計を繰り返せば、設計期間や業務量は当然増えます。

■ 実施設計中|一つの変更が複数図面へ影響する

実施設計に入ると、

平面詳細。
展開図。
天井。
照明。
コンセント。
建具。
設備。
仕上げ。
構造。

など、工事に必要な情報を具体化していきます。

例えばキッチンの位置を変更するだけでも、

給排水。
電気。
換気。
照明。
天井。
床。
家具。
建具。

などへ影響する可能性があります。

つまり、設計が進むほど「一つだけ変更する」ということが難しくなっていきます。

■ 見積中|変更すると再積算が必要になる

基本設計後に施工会社へ見積を依頼した後でも変更は可能です。

ただし設計内容を変更すれば、施工会社も見積を修正する必要があります。

材料数量を拾い直す。
専門業者へ再見積を依頼する。
工法を再検討する。

などの作業が発生します。

変更回数が増えれば、見積確定までの期間も長くなります。

■ 工事契約・発注後|「まだ工事していない」でも費用が発生することがある

ここは誤解されやすいところです。

「まだ取り付けていないから変更できますよね?」

という場合でも、すでに商品を発注している可能性があります。

例えば、

キッチン。
ユニットバス。
サッシ。
建具。
タイル。
照明。
空調。
造作家具。

など。

製作開始後や発注後なら、キャンセル費や返品不可、再発注費などが発生することがあります。

現場にまだ付いていないことと、費用が発生していないことは別です。

■ 施工中|見えないところでは工事が進んでいる

施工中も同じです。

例えば、

「この壁にコンセントを追加したい」

という変更。

仕上げ前だから簡単に見えるかもしれません。

しかし壁の中では、

下地。
断熱材。
配線。
配管。

などがすでに施工されている場合があります。

変更するために既存施工部分を撤去し、配線を変更し、下地を復旧し、仕上げをやり直せば、当然追加費用が発生する可能性があります。

■ 「変更できますか?」と「無料ですか?」は別

ここが今回、最もお伝えしたいポイントです。

建築では、技術的には変更可能なことがたくさんあります。

しかし、

変更可能
=
追加費用なし

ではありません。

確認したいのは、

変更できるのか。
追加工事はいくらか。
設計変更はいくらか。
材料は発注済みか。
工期は延びるのか。
他の工事へ影響するのか。

までです。

■ 工事費だけでなく、設計業務も増える

設計変更では、施工会社だけが作業するわけではありません。

設計者にも、

プランの再検討。
図面修正。
仕様変更。
構造・設備との再調整。
施工会社への説明。
見積内容の確認。
現場への変更指示。

などが発生します。

特に、

決定済みプランを大幅に変更する。
実施設計完了後に間取りを変更する。
施工中に何度も仕様を変更する。

といった場合、当初の設計契約で想定していた業務範囲を超える可能性があります。

その場合、変更内容や時期によっては追加設計料が必要になることもあります。

■ 設計変更は「施主都合」だけではない

設計変更というと、

「お客様が途中で希望を変えた」

というイメージがありますが、それだけではありません。

例えば、

行政との協議。
法規上の条件。
構造検討。
施工上の納まり。
メーカーの廃番・仕様変更。
材料の供給状況。
現場条件。

などによって変更が必要になることもあります。

■ リノベーションは「解体後に分かる」ことがある

特にリノベーションでは、新築とは違う難しさがあります。

壁を解体したら柱があった。
図面と配管位置が違った。
構造材が劣化していた。
下地が想定と違った。
過去の増改築が判明した。

など、工事前には確認できなかった状況が見つかることがあります。

この場合は、現況に合わせて設計・施工方法を変更する必要があります。

だからリノベーションでは、一定の変更可能性や予備費も考えて計画することが重要です。

■ では、いつまでに決めればいい?

理想は、

「基本設計で大きな方向性を決める」

ことです。

間取り。
設備。
主要な素材。
デザイン。
予算。

など、建築の骨格となる部分は基本設計中にしっかり検討する。

その後、実施設計で詳細を詰め、発注・施工へ進む。

もちろん、すべてを最初から完璧に決めることはできません。

現場で確認して決めた方が良いこともあります。

重要なのは、

「今決めるべきこと」と
「後で決めても問題ないこと」

を設計者と整理することです。

■ S・CAPE CONSULTINGが考える設計変更

設計変更は悪いことではありません。

より良い建築にするために、設計途中で変更することもあります。

ただし、

基本設計。
実施設計。
見積。
発注。
施工。

と工程が進むほど、変更による影響範囲は広くなります。

だから、

「変更できますか?」

だけではなく、

「今変更すると、何が変わるのか?」

を確認する。

工事費。
設計料。
工期。
発注済み材料。
他工種への影響。

ここまで確認してから変更を判断する。

設計変更は、

早いほど選択肢が多く、
影響を小さくしやすい。

だからこそ基本設計の段階で、時間をかけて検討する意味があります。

「後から変えればいい」ではなく、

「今、決められることは今決める」。

それが工事費・工期・設計品質をコントロールするうえで重要だと考えています。

株式会社 S・CAPE CONSULTING
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#一級建築士 #設計変更 #家づくり #リノベーション

【ARCHITECT COLUMN|VOL.35】【一級建築士が教える】「相見積は3社取れば安心?」― 見積を取る前から、建築費の管理は始まっている。―「相見積は何社くらい取った方がいいですか?」よくいただく質問です。私たちが基本的におすす...
29/09/2026

【ARCHITECT COLUMN|VOL.35】

【一級建築士が教える】

「相見積は3社取れば安心?」

― 見積を取る前から、建築費の管理は始まっている。―

「相見積は何社くらい取った方がいいですか?」

よくいただく質問です。

私たちが基本的におすすめしているのは「2社程度」です。

1社では比較対象がありません。一方、3社・4社・5社と増やせば、その分だけ良い施工会社が見つかるとも限りません。

相見積は、単に複数の見積金額を並べる作業ではないからです。

■ 相見積は「同じ条件」で比較する

例えば、

A社 4,800万円
B社 5,100万円

なら、A社の方が安く見えます。

しかし、A社には空調・照明・外構が含まれておらず、B社には含まれているかもしれません。

工事範囲、数量・単価、見積除外、仮設・諸経費、工期、施工体制、保証、支払条件などを揃えて初めて比較できます。

「安い」というイメージではなく、同じ条件で比較することが重要です。

■ 基本設計完了時に2社程度へ相見積

私たちは、基本設計がまとまった段階で相見積を行う流れを基本としています。

建物規模、間取り、主要仕様、設備などがある程度決まってから、発注候補となる2社程度へ同じ条件で見積を依頼します。

施工会社が増えれば、各社からの質疑、図面補足、見積内容の精査、抜け漏れ確認、条件整理なども増えます。

当然、見積期間も長くなり、設計事務所側の業務量も増えます。

そのため「とりあえず5社」ではなく、本当に発注候補となる会社へ絞って依頼することをおすすめしています。

■ 比較後は1社に決めてVEへ

相見積後も、複数社を最後まで値下げ競争させ続けるわけではありません。

金額だけでなく、施工実績、現場体制、工期、保証、担当者の対応などを比較し、施工候補を1社に決定します。

その後、選定した1社とVE・減額調整を進めます。

何を残すのか。
何を変えるのか。
何をやめるのか。

材料、設備、施工方法、造作、仕上げ範囲などを整理して予算へ近づけていきます。

つまり、

「相見積=施工会社を比較・選定する段階」

「VE=選定した施工会社と予算を調整する段階」

です。

■ 予算管理は、相見積より前から始まっている

理想やイメージだけでプランをつくり、設計を進め、最後に初めて見積を取った結果、

「3,000万円くらいだと思っていたのに6,000万円だった」

となる。

こうした大きな乖離は、できるだけ避けたいところです。

そのため設計初期から、規模・構造・仕様などが近い過去の事例を参考にして予算感を確認します。

■ 過去事例は「現在価格」に補正する

ただし、

「2年前に3,000万円だったから、今回も3,000万円」

とは考えません。

建材価格、労務費、運送費、エネルギー価格、メーカーの価格改定などによって建築費は変化します。

さらに地域、敷地条件、搬入条件、構造、仕様によっても変わります。

過去事例は価格表ではなく「物差し」。

過去の類似事例に、現在の物価・労務費・メーカー価格改定・今回の条件を反映しながら、設計途中でも予算を確認していきます。

■ 思い込みや先入観で決めない

「大手だから高い」
「小さな工務店だから安い」
「地方の会社だから安い」
「紹介だから安心」

こうしたイメージだけで施工会社を決めないことも重要です。

相見積には、こうした思い込みを実際の数字と条件で確認する意味もあります。

■ 見積が予算の2倍だったら?

見積が大幅に予算を超えると、

「施工会社が高すぎる」
「設計事務所が予算を考えていない」

という話になりがちです。

もちろん設計者にも、設計途中で概算を確認し、予算との乖離を把握する役割があります。

一方で、

そもそも希望している建物規模・設備・仕様・デザインが、当初予算で実現可能だったのか。

という確認も必要です。

理想をすべて盛り込んだ建築と、予算内で実現できる建築は必ずしも同じではありません。

複数社から近い価格の見積が出ているのであれば、3社目、4社目を探し続けるより、設計内容と予算そのものを見直す必要がある場合もあります。

■ 「見積は無料」が当たり前とは限らない

建築工事の見積は、金額を書き込むだけではありません。

施工会社は図面を読み、数量を拾い、材料価格を確認し、専門業者へ見積を依頼し、施工方法や現場条件を検討して金額をまとめます。

規模が大きくなるほど、相応の時間と人件費がかかります。

これまで「契約前の見積は無料」という商習慣が広くありましたが、詳細な積算・見積作成を無償業務として当然視しない考え方も出てきています。

概算までは無料。
詳細積算は有料。
契約した場合は見積作成費を工事代金へ充当する。

こうした考え方もあります。

だから、

「無料だから、とりあえず何社にも見積を依頼する」

ではなく、本当に発注候補となる施工会社へ依頼する。

5社へ依頼すれば、発注者には5枚の見積書でも、施工会社側では5社それぞれが積算業務を行っています。

さらに設計事務所側にも、各社への質疑対応・条件整理・比較業務が発生します。

■ S・CAPE CONSULTINGが考える相見積

基本的な流れは、

予算設定
↓
過去事例を現在価格へ補正
↓
基本設計
↓
2社程度で相見積
↓
条件を揃えて比較
↓
施工候補を1社に決定
↓
1社とVE・減額調整
↓
詳細設計・最終見積
↓
工事請負契約

です。

相見積は「一番安い会社」を探すためだけのものではありません。

思い込みや先入観を数字と条件で確認し、価格・品質・施工体制・対応力まで含めて、

「この建築を任せられる施工会社」

を選ぶためのプロセスです。

何社から見積を取ったかより、
どれだけ精度の高い比較ができたか。

そして建築費は、最後の見積で初めて知るものではなく、過去事例・現在の物価・概算・相見積・VEを使いながら、

「設計と並行して管理していくもの」

だと考えています。

株式会社 S・CAPE CONSULTING
一級建築士事務所

Scale to Environment.
一つの建物から、街の未来へ。

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TEL|080-7032-0788

#一級建築士 #相見積 #建築費 #家づくり

森のそばで、土地の可能性を考える。建物や擁壁に囲まれた景色よりも、木々の緑に包まれる風景に心が動く。この土地には、そんな魅力があります。すぐそばにレッドゾーンがあるからこそ、地形や規制を丁寧に読み、建てる場所と暮らす場所を慎重に考えたい。自...
26/09/2026

森のそばで、土地の可能性を考える。

建物や擁壁に囲まれた景色よりも、木々の緑に包まれる風景に心が動く。この土地には、そんな魅力があります。

すぐそばにレッドゾーンがあるからこそ、地形や規制を丁寧に読み、建てる場所と暮らす場所を慎重に考えたい。自然の豊かさと向き合いながら、この土地ならではの住まいを描く。そのために、建築家がいるのだと思います。

【ARCHITECT COLUMN|VOL.34】【一級建築士が教える】「施主支給にすれば安い?」ネットで買って現場に渡せば終わり?― 商品価格だけでは見えない、発注・納期・施工・保証・責任の話。―最近では、住宅設備や建材をネットで購入でき...
26/09/2026

【ARCHITECT COLUMN|VOL.34】

【一級建築士が教える】

「施主支給にすれば安い?」
ネットで買って現場に渡せば終わり?

― 商品価格だけでは見えない、発注・納期・施工・保証・責任の話。―

最近では、住宅設備や建材をネットで購入できるようになり、「この商品は自分で買って現場へ支給したい」というご相談も増えています。

いわゆる「施主支給」です。

照明、水栓、洗面器、トイレ、タイル、フローリング、家具、エアコンなど、さまざまな商品が対象になります。

確かに、施工会社を通して購入するより安く買える商品もあります。

ただし、

「商品が安く買えた=工事全体も同じ金額だけ安くなった」

とは限りません。

■ 施主支給とは?

通常、施工会社が商品を手配する場合には、商品を購入するだけでなく、品番・仕様の確認、納期確認、搬入、現場との調整、施工業者への情報共有なども行います。

施主支給では、その一部を発注者自身が担うことになります。

つまり、

「ネットで買って現場へ送れば終わり」

ではありません。

■ 商品を買う前に確認すること

例えば水栓を施主支給する場合。

デザインや価格だけではなく、

品番は正しいか。
取付寸法は合っているか。
給排水条件は合っているか。
必要な付属部材は揃っているか。
国内で施工できる製品なのか。
納期は間に合うのか。

まで確認する必要があります。

「安かったので買いました。でも現場には付きませんでした」

となれば、結果的に余計な費用がかかる可能性があります。

■ 納期が遅れると、工事も止まる

建築工事には工程があります。

例えば、

下地工事
↓
設備施工
↓
仕上げ
↓
器具取付
↓
検査

という流れの中で、必要な商品が届かなければ次の工事へ進めないことがあります。

その結果、職人を再手配することになれば、再訪問費や追加費用が発生する場合もあります。

商品代が3万円安くても、工程変更でそれ以上の費用が発生すれば、本来の目的とは逆になってしまいます。

■ 誰が受け取る?どこに置く?

意外と見落とされるのが、搬入と保管です。

大型商品なら、

誰が現場で受け取るのか。
何階まで運ぶのか。
荷揚げは必要か。
どこに保管するのか。
工事中に傷が付かないか。

まで考える必要があります。

施工会社が受取・移動・保管まで行うのであれば、その作業にも手間が発生します。

■ 保証と責任の窓口も確認する

施工会社が商品を仕入れて施工した場合、問題が起きたときには施工会社が窓口となって原因確認を行うケースがあります。

一方、施主支給品の場合、

商品自体の初期不良なのか。
施工不良なのか。
発注した品番が違ったのか。
輸送中の破損なのか。

を切り分ける必要があります。

メーカー保証があっても、交換品の手配、取外し、再取付などの費用まで自動的にすべて保証されるとは限りません。

だから、購入前に「誰がどこまで責任を持つのか」を確認しておくことが重要です。

■ 施主支給にしたら、設計料も安くなる?

ここもDIYや分離発注と同じ考え方です。

例えば施工会社から購入予定だった100万円の設備を、施主が80万円で直接購入したとします。

施工会社への発注額は下がります。

しかし設計者が、

商品を選定する。
仕様・品番を確認する。
寸法を確認する。
色・素材をコーディネートする。
図面へ反映する。
納まりを検討する。
施工会社と調整する。

のであれば、設計業務は残っています。

むしろ特殊な製品、海外製品、通常使用しないメーカーなどでは、確認・調整業務が増える場合もあります。

「施工会社への発注額が下がった=設計業務も同じ割合で減った」

とは限りません。

■ 施主支給が悪いわけではない

施主支給にはメリットもあります。

欲しい商品を自由に選べる。
ネット限定品を使用できる。
こだわりのメーカーを選べる。
商品によっては価格を抑えられる。

私たちも、条件が合えば施主支給を取り入れること自体に問題はないと考えています。

重要なのは、

「安いから施主支給」

だけで判断しないことです。

■ S・CAPE CONSULTINGが考える施主支給

施主支給で確認したいのは、

商品価格だけではありません。

選定。
仕様確認。
発注。
納期。
搬入。
保管。
施工。
保証。
不具合時の責任。

ここまで含めて考える必要があります。

施工会社へ一括して任せていた場合には、その会社が行っていた仕事の一部を、施主支給では発注者自身が担うことになります。

つまり施主支給とは、

「商品を自分で買うこと」

だけではありません。

「発注者としての仕事と責任の一部を、自分で引き受けること」。

商品単価だけではなく、建築プロジェクト全体で本当にメリットがあるのか。

そこまで考えて選択することが大切だと思います。

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#一級建築士 #施主支給 #リノベーション #家づくり

【ARCHITECT COLUMN|VOL.33】【一級建築士が教える】「分離発注の方が安い?」誰が現場をまとめますか?― 元請をなくしても、「まとめる仕事」はなくならない。―建築工事には、施工会社1社へ工事全体を依頼する「一括発注」と、大...
22/09/2026

【ARCHITECT COLUMN|VOL.33】

【一級建築士が教える】

「分離発注の方が安い?」
誰が現場をまとめますか?

― 元請をなくしても、「まとめる仕事」はなくならない。―

建築工事には、施工会社1社へ工事全体を依頼する「一括発注」と、大工・電気・設備・塗装・家具などを、それぞれの専門業者へ直接依頼する「分離発注」があります。

最近、「専門業者へ直接発注すれば、元請を通さないので安くなりますよね?」というご相談をいただくことがあります。

確かに分離発注には、専門業者を直接選べる、各工事の価格が見えやすい、こだわりの職人やメーカーへ直接依頼できる、といったメリットがあります。

ただし、元請施工会社をなくしても、元請が行っていた「まとめる仕事」までなくなるわけではありません。

■ 一括発注では、誰が現場をまとめている?

一括発注では、

発注者
↓
元請施工会社
↓
大工・電気・設備・塗装・家具など

という構成になります。

元請施工会社は、専門業者へ仕事を振り分けるだけではありません。

工程管理、各業者の手配、工事区分の整理、搬入・養生、施工上の取り合い、品質・安全管理、変更対応、トラブル時の調整など、工事全体をまとめています。

■ 分離発注では「誰がまとめるのか?」

分離発注では、

発注者
↓
大工A社
電気B社
設備C社
塗装D社
家具E社

というように、発注者がそれぞれの施工会社と直接契約します。

分離発注という方式そのものに問題があるわけではありません。

しかし建築工事は、各業者が独立して作業しているわけではありません。

例えば設備配管が終わらなければ大工が壁を閉じられない。大工工事が遅れれば塗装業者が入れない。仕上げが終わらなければ家具を設置できない。

つまり、複数の専門業者をつなぐ「工程管理・施工調整」が必要です。

■ 「設計事務所でまとめてもらえますか?」

分離発注を希望されるお客様から、

「各業者にはこちらから直接発注するので、現場は設計事務所でまとめてもらえますか?」

というご相談をいただくことがあります。

もちろん、業務として対応することは可能です。

ただし、

「設計者=各施工業者をまとめる現場管理者」

ではありません。

設計事務所が行う「設計・工事監理」と、複数の施工会社について工程・工事区分・発注・施工調整等を行う「PM・CM的な業務」は、役割が異なります。

■ 「工事監理」と「現場をまとめること」は違う

工事監理は、施工された工事が設計図書と整合しているかを確認することが基本となる業務です。

一方、分離発注された各施工会社について、

・誰がいつ現場に入るのか
・どの会社がどこまで施工するのか
・前後工程をどうつなぐのか
・搬入や養生をどうするのか
・変更工事をどう整理するのか
・業者間で問題が起きたとき誰が調整するのか

まで管理することは、通常の設計・工事監理とは別の業務になる場合があります。

設計事務所へこの役割まで依頼する場合には、業務範囲を明確にしたうえで、PM・CM等として別途費用が必要になる場合があります。

■ 分離発注=管理費ゼロ、ではない

例えば一括発注で3,000万円だった工事が、専門業者へ直接見積を取った結果、合計2,700万円になったとします。

一見すると、

「300万円安くなった」

ように見えます。

しかし、分離発注では誰かが各施工会社をまとめる必要があります。

その役割を発注者自身が行うのであれば、発注者の時間と責任が増えます。

設計事務所やPM・CMへ依頼するのであれば、当然その業務には費用が発生します。

したがって比較するなら、

「一括発注の総額」

と、

「分離発注による各工事費+管理・調整コスト」

を比較する必要があります。

■ 責任の窓口も変わる

例えば完成後に漏水が発生した場合。

原因が設備配管なのか、防水なのか、設備機器なのか、他業者の施工時についた傷なのか分からないことがあります。

一括発注なら、基本的には元請施工会社が窓口となって原因を調査し、各専門業者と調整します。

分離発注の場合は、発注者がそれぞれの施工会社と直接契約しているため、誰の施工範囲に原因があるのかを整理し、それぞれと調整する必要が出ることがあります。

契約を分けるということは、「責任の窓口も分かれる可能性がある」ということです。

■ 分離発注そのものが悪いわけではない

分離発注には、

専門業者を直接選べる。
価格構成が見えやすい。
特定の職人へ依頼できる。
材料やメーカーを指定しやすい。

といったメリットがあります。

建築に詳しい発注者や、全体を管理するPM・CMがいるプロジェクトでは、有効な発注方式になることもあります。

重要なのは、

「元請を外せば安くなる」

という理由だけで選ばないことです。

■ S・CAPE CONSULTINGが考える分離発注

一括発注と分離発注のどちらが正解、という話ではありません。

重要なのは、

誰が設計するのか。
誰が施工するのか。
誰が工事監理するのか。
誰が工程を管理するのか。
誰が各施工会社を調整するのか。
トラブル時の窓口は誰なのか。

を最初に明確にすることです。

元請施工会社を外しても、元請が行っていた「まとめる仕事」はなくなりません。

そして、

「各社には直接発注するので、設計事務所でまとめてください」

という場合、その管理・調整業務も専門業務です。

当然、業務範囲を定め、それに応じた費用が必要になります。

大切なのは、

「どちらの見積が安いか」

だけではなく、

「誰がプロジェクト全体を管理し、その費用まで含めて総額はいくらになるのか」。

そこまで整理して初めて、一括発注と分離発注を適切に比較できると考えています。

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【ARCHITECT COLUMN|VOL.32】【一級建築士が教える】「DIYにすれば、安くなりますよね?」― コストダウンだけを目的にするなら、本当にDIYが正解? ―最近、設計の打合せで「ここはDIYにすれば安くなりますよね?」という...
21/09/2026

【ARCHITECT COLUMN|VOL.32】

【一級建築士が教える】

「DIYにすれば、安くなりますよね?」
― コストダウンだけを目的にするなら、本当にDIYが正解? ―

最近、設計の打合せで「ここはDIYにすれば安くなりますよね?」という質問をいただくことが増えました。

壁を塗る、棚をつくる、床を施工する。もちろんDIY自体が悪いわけではありません。自分の家づくりに参加することには、大きな価値があります。

ただ、「工事費を安くすること」だけが目的なら、本当にDIYが最適なのかは一度考える必要があります。

■ DIY=そのままコストダウン、ではない

例えば施工会社の見積に100万円の塗装工事があり、それをDIYに変更すれば、施工会社への発注額は下がる可能性があります。

しかしDIYにも、材料・工具・養生・運搬・作業時間・清掃・手直しなどが必要です。

さらに工事中にDIYを組み込む場合、施工会社の工程との調整も必要になります。

壁下地・パテ処理=施工会社
↓
仕上げ塗装=DIY
↓
照明器具取付=電気業者
↓
家具設置=家具業者

という工程なら、DIYが遅れれば後工程も遅れます。職人の再手配、再養生、現場管理期間の延長などによって、追加費用が発生する可能性もあります。

つまり、「施工会社への発注額が減る」ことと「プロジェクト全体のコストが同じだけ減る」ことは別です。

■ DIYするなら、施工会社との打合せを密に

DIYは、工事が始まってから「ここは自分でやります」と決めるのではなく、事前に施工会社と範囲を決めておくことが重要です。

どこをDIYするのか。施工会社はどこまで仕上げるのか。材料は誰が発注するのか。いつDIYするのか。養生は誰が行うのか。DIY後に施工会社が再び作業するのか。

DIYも一つの「工種」として、工程の中に組み込みます。

責任区分も重要です。例えば壁下地を施工会社、仕上げ塗装をDIYとした場合、完成後に塗装が剥がれたら、下地・材料・施工方法のどこに原因があるのかを切り分ける必要があります。

■ DIYだから何でもできるわけではない

DIYでも、建築に関する法令や資格制度がなくなるわけではありません。

電気工事には資格が必要となる作業があります。ガス、給排水、構造、防火・避難に関係する部分なども、内容に応じて専門業者への確認が必要です。

マンションなら、管理規約、工事申請、共用部分、床材の遮音性能、配管、サッシ等の確認も必要です。

また、中古住宅をDIYで解体する場合には石綿(アスベスト)にも注意が必要です。「少し壁を壊すだけ」「床を剥がすだけ」と、確認せずに解体から始めないことも重要です。

■ DIYにしたら、設計料も安くなる?

ここも最近よく聞かれる質問です。

例えば設計料を「工事費×10%」として契約し、その後200万円分をDIYへ変更した。

そこで「工事費が200万円減ったので、設計料もその分下がりますよね?」となるかというと、単純ではありません。

DIYに変更しても、設計者が塗料や床材を選定し、色・質感をコーディネートし、下地との相性、見切り、納まり、施工会社との取り合い、工程などを検討するのであれば、設計業務は残っています。

むしろ、施工会社工事+DIY+施主支給+別途発注が混在することで、調整業務が増える場合もあります。

DIYで減るのは「施工会社が施工する仕事」であって、「設計・調整する仕事」とは限りません。

設計料を「工事費×○%」とする場合も、DIY・施主支給・別途発注をどう扱うのか、設計契約時に確認しておくことが重要です。

■ 素材選定・コーディネートも設計業務

例えばフローリングを施主支給する場合でも、樹種、色、幅、厚み、張り方向、床暖房対応、下地、建具との高さ、見切り、数量、ロス率、納期などを決める必要があります。

さらに壁・天井・建具・家具・照明とのコーディネートも必要です。

「自分で施工する」ことと、「設計・仕様決定まで自分で行う」ことは別です。

■ 安くするためだけなら、本当にDIYが必要?

ここが今回、一番お伝えしたいことです。

DIYの目的が「とにかく建築費を安くしたい」だけなのであれば、材料費、工具、自分の時間、工程調整、手直し、保証、設計・コーディネートまで含めて考えてみてください。

想定したほど安くならないのであれば、施工会社へ任せた方が合理的な場合もあります。

一方で、

「自分の家づくりに参加したい」
「家族でつくった記憶を残したい」
「自分の手で建築を完成させたい」

という目的なら、DIYには大きな意味があります。

自分で壁を塗った。家族で棚をつくった。子どもと一緒に仕上げた。

完成した建物を見るたびに、その時間を思い出す。

その価値は、工事見積書には出てきません。

■ S・CAPE CONSULTINGが考えるDIY

DIYは、やってはいけないものではありません。

ただし、「安くするための手段」としてだけ考えない。

施工会社・設計者と事前に役割を整理し、工程・素材・納まり・責任範囲まで共有する。

コストダウンだけが目的なら、プロに任せた方が合理的なこともあります。

一方、経験や体験そのものに価値を感じるなら、DIYを取り入れる意味は十分にあります。

DIYは単なるコストダウンではなく、「自分たちが建築に参加する方法の一つ」。

プロの施工と上手く組み合わせながら、家づくりそのものを楽しむことが大切だと考えています。

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大崎2-7/12
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141-0032

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月曜日 09:00 - 18:00
火曜日 09:00 - 18:00
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